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今回は友人の引っ越しを手伝った際に貰ってきたミニコンポの修理をレポートします。
調べてみるとバブルに兆しが見え始めた頃である1991年の発売らしく、現在の「ミニステレオ」と呼ばれる機種とは違って一応コンポーネントになっています。 コンポーネントといってもダブルカセットデッキ、CDプレーヤー、チューナーアンプ(昔の呼称ではレシーバー)で構成されており、私の年代からすれば「オーディオ」と呼ぶには少々考えてしまうシステムです。
また全コンポーネント共フルロジックになっており、全てリモコン操作を可能とした、良く言えば先進的、悪く言えばコストダウンの見本のようなシステムでもあります。
故障箇所はCDトレーとスピーカーで、CDの方はトレーが出ると同時に引っ込んでしまい、スピーカーは多分に漏れずエッジの崩壊と言う完全ジャンク状態です。
CDを分解してみますと、トレーの位置はトレーそのものではなく駆動ギアの回転だけで読みとっている様で、トレーが全開位置まで来ているのにギアが途中までしか回っていない為、トレーが出ている際に手で押し込んだ状態としてギアが反転していました。
トレーのラックギアを一歯ずつずらしながら調整して正常となりましたが、同じ症状が出ている人が多い様です。 これは明らかにトレーの強度不足が原因と考えられ、全開位置だと全体が大きく撓みます。
スピーカーはエンクロージャー前方が丸みを帯びたデザインになっており、コーンも「ピュアクロスカーボン」と手の込んだ造りに見えます。
しかしながら、MDFに木目のシートを貼り付けた代物で、内部は薄いスポンジの帯が入っているだけという仕様になっています。背面にポートを持つバスレフ式である事と、素材がMDFの為だからでしょうか? それにしてもコストダウン以外に目的は見いだせないのですが…。
CDトレーの開閉位置は矢印のギアの回転によって読みとられている。 誤作動はこのギアとトレーのラックギアがずれていた事が原因だった。
崩壊したスピーカーエッジ。ウレタン製の物との違いはエッジに対して垂直状にクラックが入っている事。
カーボンを強調する為かコーン側の耳は内貼り。フレーム側は外貼りだが、何と耳は紙リングの上から貼り付けられている。
崩壊したエッジを剥がした状態。合成ゴム系と思しき接着剤が使われており、最終的にはペイントリムーバーを使用した。コーン側は剥がせず、仕方なく耳の分だけを残すこととした。
スピーカー全体を正規の位置に戻し、大きめの音量でエージングします。この際、色々なジャンルの音楽で慣らした方が良い様です。
ネットオークションで中古を落札した為にメーカー出荷時の音とは比較できませんが、前回修理したSC-101よりもfoは低く設定されている印象で、音圧は高くないものの、低い周波数も再生されている様です。
また、奥行き感はSC-101に譲るも、広がりは勝っている感じです。
音圧が88dB/Wと低い為にアンプを選びますが、男性女性を問わずヴォーカルのつややかさが特徴的です。
位置づけとしては3ウェイではなく、2ウェイ+スーパートゥイーターとあくまで2ウェイが基本となっていますが、トゥイーターの19KHz付近が一番落ち込む特性をスーパートゥイーターで補っている様で、周波数特性のグラフでは10KHzから徐々に盛り上がり、19KHz付近では7dB前後補正しています。(私の耳では大差が無い様に思えますが、シンバルの余韻に差が出ている様に聞こえます。)
DIATONE DS-201:1978年発売 32,000円/1本 2/3WAYブックシェルフ型アコースティックエアサスペンション方式 ウーファー20㌢コーン型 トゥイーター5㌢コーン型 スーパートゥイーター1.6㌢ドーム型 再生周波数 40~25KHz 音圧88dB/W/m クロスオーバー周波数 1.5KHz 10KHz
20㌢コーンとしては巨大なマグネット。サブスピーカーのDS-5Bの10㌢ウーファー全体よりも大きい事が解ります。
ほぼ新品の特性に近づいたと思われるDS-201
エッジもこの様に柔らかくなり、バスドラムの再生時もコーンがしっかりストロークする様になりました。しかしながらダンプ剤が抜けている訳ではなく、密閉式システムとして生きています。
スピーカー修理の第二弾は、別邸のサブシステムにメインスピーカーとして使用しているDIATONEのDS-201です。
25センチウーファーの2ウェイにスーパートゥイーターを搭載したDS-251の後継機として1978年に発売された三桁シリーズの末弟に相当します。
この機種はクロスエッジを使用している為に崩壊する事はありませんが、ダンプ剤として使用されているピスコロイドが硬化してしまい、殆ど低音が出なくなります。ネットオークションでも度々見かけますが、例外なく同様の症状が進んでいる様です。
硬化が進むとフランスパンのようにカチカチになり、指で押してみるとコーンの動きを妨げている事は一目瞭然です。 こうなるとウーファーとして役目を果たさなくなるだけでなく、そのまま使用するとボイスコイルを損傷してしまう可能性もあります。
軟化処理を請け負っている業者さんも存在しますが、今回はピスコロイド軟化剤を使用し、自分の手で新品に近い難度まで復活させる事に挑戦しました。 但し、当該機種はフレームをエンクロージャーに接着してあり、ボルトを外しただけではユニットを取り外す事は出来ません。結局、マイナスドライバーに布製ガムテープを貼って力業で外しました。(笑)
外したユニットの裏からエッジに丸筆で軟化剤を塗布します。コーンはパルプ製ですので、コーンに着かない様に慎重に作業。
塗布後は溶剤を行き渡らせる為にコーンをストロークさせ、念のために逆さにして放置します。着けすぎた溶剤が谷部に流れるようにし、コーン紙に浸透させない為です。
翌日に正規の向きに固定し、小筆で表面からも塗布しました。その際も頂点から外側のみとし、スピーカー全体を仰向けにしたまま24時間放置します。この際、底の丸いスプレー缶を載せ、コーンを押した状態にしておきます。
力業でウーファーユニットを外したDS-201。 エンクロージャー内部にはグラスウールがビッシリと詰められています。
元々黒に近いグレーだったコーンも茶褐色に変色しています。 画像では解りづらいですが、エッジはフランスパンの様にカチカチになっています。
流石に3桁シリーズだけあって、フレームは強固なアルミダイキャストの一体型になっており、共振を防止しています。
苦労の結果、昔の音が蘇りました。
SC-101は20㌢ウーファーとドーム型トゥイーターの2ウェイシステムで、デンマークのピアレス社のユニットを使用しており、厚い低音と共に高域までフラットに再生できる隠れた名機だと思っています。
特に、ヴォーカルが前に出た再生音で、アナログソースだと奥行きまで再現できる、小型スピーカーの傑作機ではないでしょうか。
メーカーも「スーパーボーイ」の愛称を付す等、密閉式スピーカーに強いDENONの気概が見て取れます。
DENON SC-101:密閉式2ウェイ ウーファー20㌢コーン型 トゥイーターシルクドーム型 音圧91dB/W/m 再生周波数45~20KHz 入力MAX80W クロスオーバー3KHz 公称インピーダンス8Ω
DIATONE DS-10B:バスレフ式2ウェイ ウーファー20㌢コーン型 トゥイーターコーン型 音圧90dB/W/m 再生周波数45~20KHz 入力MAX50W クロスオーバー1.5KHz 公称インピーダンス6Ω
エッジ交換とセンター出しが終了したユニット。フルストロークさせてもボイスコイルに抵触しません。。
DS-10BとSC-101のマグネット比較。後者の方は密閉式として設計されている為か、かなり巨大です。
正規のユニットが再び収まったSC-101。ユニットは分厚いアルミ製のリングによって全周を支えています。正規のボルトを紛失した為、今回はステンレス製のキャップボルトを奢りました。
この4号電話機を使いたくて、わざわざダイヤル回線を契約しました。
最近の若い子はダイヤル式電話機なんて使った事ないんでしょうね。
ホームオーディオのスピーカー修理をレポートします。
サブスピーカーとして使用していたのがDENON(当時はデンオンと発音)のSC-101という機種で、1981年当時で27000円/1本と言う高価格でした。
学生だった私にとっては長期のアルバイトで買った愛機でしたが、エッジがウレタンで在るが故に15年程で朽ち果て、DIATONEのDS-10Bという機種のウーファーのみを部品で発注して代用していました。
このDS-10BはDIATONEとしては19500円/1本という廉価機種で、バスレフ式ながらウレタンエッジを使用する等、低音を意識した設計になっていましたが、どうにもトゥイーターとの繋がりが悪く、ヴォーカルが引っ込んだ感の再生音でした。
これはSC-101のトゥイーターがドーム型である為、クロスオーバー周波数を3KHZに設定してウーファーにスコーカーの帯域まで任せていた事に対し、DS-10Bのクロスオーバー周波数が1.5KHzで設計されていた事に起因すると考えられます。
このウーファーも崩壊寸前となり、これを機に101のウーファー復活を決意。
DIATONEのDS-10Bのウーファーユニットを組み込んだDENON SC-101の改造機。
15年以上放置されていたSC-101のウーファーユニット。
埃も凄いが、煙草によって茶色に変色しています。 この劣化したウレタンを取り除くのが大仕事で、カッターナイフと彫刻刀を駆使して1時間。 更にフレーム側はエタノールを使用して接着剤まで除去。
劣化したウレタンを取り除いたユニット。貴重な日曜日が半日費やされました。
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懐古な趣味と報告
企画:しげ幽鬼
編集人:ネメシス